高校生の選手に初めてフットサルを教える際、フットサルとは何かを考えてもらうために、必ず同じ質問をします。それは「フットサルとサッカーの違いは何か?」です。
もちろん、たくさんのキーワードが上がってきます。スローインではなくキックイン、11人と5人、オフサイドがない、交代が自由、パワープレー、ゴールが小さい、ボールが弾まない、などなど。
その上で、「サッカーとフットサルを分ける、重大な違いは何だと思う?」と聞いてみます。
再びいくつかキーワードが上がりますが、先程よりよく考えて厳選されたキーワードとなります。ここで、私の考えを選手に伝えます。
「フットサルとサッカーの違いは二点だけです。1つ目の重大な違いはオフサイドがないこと、2つ目の重大な違いはボールがローバウンドで扱いやすいということです。」この2点がフットサルとサッカーを違う競技に変えてしまいます。
オフサイドがないのであれば、オフェンスの最前線の選手は、ディフェンスの裏を取ってボールをもらおうとします。ディフェンスの最後尾の選手は、オフェンスの選手に裏を取られないように守ります。すると自然に、ピヴォとフィクソの関係性が生まれます。
フットサルボールはサッカーボールよりもボールが扱いやすいため、足の裏を使ってプレーをします。すると、ボールを手で扱っているかのような緻密なプレーが求められます。
選手には、フットサルは足でやるバスケットボールのような競技だと説明します。
以上のことを考えた上で練習を行うと、ピヴォを狙った攻撃と、それを阻止する守備が始まります。止まったままボールを回しても、突破口が開けないため、オフェンスの選手はパスを出したその後に走り出すことになります。すると次第に、オフェンスの選手はボールをパスしたその後に、スペースを見つけて走り込む動きが求められます。そして、パラレラとディアゴナルの動きを教えることになります。
こうして武相高校のフットサルが始まります。
私は、基本的にフットサルとサッカーは同じであると考えています。その上で違いはこの2点であり、戦術を考える上での基本としているのです。
フットサルとサッカーは同じですから、戦術に溺れすぎると、基本的な技術の差によって、サッカーを主に活動するチーム(サッカー部)に負けてしまいます。戦術を磨かなければ、フットサルチームに負けてしまいます。バランスよくトレーニングする必要があるのです。
もし、フットサルのキックインをスローインにしても、フットサルはフットサルです。変わりません。サッカーのスローインをキックインにしても、多少得点は増えるでしょうが、サッカーはサッカーです。フットサルを6人制にしても、フットサルはフットサルです。サッカーを5人で行っても、7人で行っても、サッカーはサッカーです。但し、オフサイドをなしにすれば、フットサルに近い競技となります。8人制の少年サッカーは、どちらかといえば8人制のフットサルだと思っています。11人制のサッカーを、フットサルボールで行うと、フットサルに近い競技となります。5人制のフットサルを、サッカーボールで行うと、サッカーの技術が高いチームが勝利するでしょう。もちろん、ピッチの広さや人数も大いに影響があります。
オフサイドがないこと、ローバウンドで扱いやすいボールこの二点を起点として、ゴールを奪うこと、ゴールを守ることを考えることがフットサルのはじまりです。