U-18フットサルトーナメントとして2012年にスタートした大会は、今年、「ユースフットサル選抜トーナメント2015」と名称を変え、3月24・25日に東京の墨田区総合体育館で開催された。大会には、全国9地域からクラブチーム、選抜チーム、高校サッカー部などの多様な12チームが集結し、高校年代フットサルの日本一を決めるに相応しい盛り上がりを見せた。
結果はこちらから⇒ http://futsalr.com/result/youth-futsal-senbatsu-tournament2015/
大会を制したのは、名古屋オーシャンズU-18のメンバーを中心とした愛知県選抜U-18。フットサル特有の「止める」「蹴る」という基礎技術の巧さに加え、組織的なディフェンス・オフェンスの戦術の質が高く、他のチームに比べて目を見張るものがあった。また、惜しくも決勝戦で敗れてしまった東京都ユースリーグ選抜U-18も「フットサルらしい」ボールの持ち方をする選手が多く印象深かった。
futsal Rでは、優勝した愛知県選抜U-18の高橋優介監督と5番 北野聖夜選手、10番 水野拓海選手、準優勝の東京都ユースリーグ選抜U-18の18番 清水竣生選手にインタビューを行った。
<愛知県選抜U-18・高橋優介監督>
futsal R(以下、R)「高橋監督、おめでとうございます。まず、今の率直な感想をお願いします」
高橋監督「夏、(名古屋オーシャンズU-18で)勝てなかった分、今回愛知選抜ですけどオーシャンズのスクールの子がメインで出ていたので、すごく選手たちはこの大会に向けて「取りたい」っていう気持ちが強かったと思うので、それを少しでもサポートできたのはすごく嬉しいですね」
R「決勝戦に向けてどんな準備をされましたか?戦略、戦術など教えてください」
高橋監督「戦略的には、ゲーム前に東京選抜のゲームをあまり観られなかったので、具体的にここが弱いとか強みとかはそんなに分かっていなかったですね。逆に選手たちは観ていたようだったので、選手たちに聞きながら。なので、直前ですね。時間もなかったので、コートに出てから選手たちから聞いて、ここだけ気を付けるということを何点か上げました。やっぱり18番(東京都ユースリーグ選抜U-18の清水竣生選手)の個の能力。あとは、セットプレー、キックインとかでいい形で点を取っていたので、そこで失点はしてしまうかもしれないけど、出来るだけ自由を奪えるように気を付けようねと、普段やっている守り方の確認をしていましたね。なので、戦略というか戦術面の確認がメインでしたね。ゲームをどうコントロールしていこうというところまでは何も考えられなかったので、やってみてどう出るかという感じでした」
R「いい形で連続して点が取れて、途中4-1と点差が開きましたが、その時はどんな心境でしたか?」
高橋監督「4-1に開いた時には、きっと相手が勝負してくるセットが出てきて、8番(東京都ユースリーグ選抜U-18の高瀬剛選手)とか18番の子が出て来るのかな、押し込んでくるのかなというのがあったので、残り3、4分のところでうちはゴリゴリセットというか(笑)、いつも2つにセットを分けているので、ゴリゴリ君たちを多めに入れられるようにタイムのコントロールを考えつつやっていました。あとは、時間によっては、今回出場できていない選手たちを入れてあげようかなというのもあって、ひとまず1点差でもいいからそのまま勝ち切れればいいというのが正直な心境でした」
R「今大会、(サッカーではなく)しっかりとフットサルをするチームがベスト4まで勝ち上がり、いい試合になって決勝を迎えられたという点では前大会に比べて進歩したかなと思います。その点についてはどう思われますか?」
高橋監督「まだフットサルを競技としてやっているU-18のチームも少ないですし、関東に比べるとうちの東海地域はだいぶ遅れていてまだリーグ戦もない状態なので、まずそういうところから少しでもプラスになることをやっていかないと、地域的には厳しいのかなと。東京、関東のチームはそういう事をやっているので、今大会でもその積み重ねが出ているのかなと思います。フットサルがもっと認知されたり普及していくためには、やはりこの高校年代が大事だと思うので、その面も含めて、自分がやっている愛知県でももうちょっと何かやっていかないと行けないのかなと改めて感じました」
R「最後に、来シーズンの目標、抱負をお聞かせください」
高橋監督「今年はU-18のチームは高校生の年代では全日本ユースで準優勝で、今回愛知県選抜では優勝しました。正直言うと、来季に関しては不安しかないです。3年生が抜けてしまいますし、僕が3年生たちに頼っていた部分があるので。2年生の質が低いということではないんですけど、新しいチームになっていく時に何をどうしていこうかなというのをしっかり考えていかないといけないかなと思います。今の3年生は小学校からやってきた年代の子たちなんですね。うちがチームとして起ち上げて小6から入ってくれた子たちが初めて高3で終える年だったので、今年は僕の中では結果に拘っていた部分があったんです。その反動が来シーズンに出ないようにしなきゃいけないなと思っています」
<愛知県選抜U-18・5番 北野聖夜選手>
R「チームが優勝した要因は何だと思いますか?」
北野選手「10番の水野っていう大きいピヴォがいるんですけど、彼を中心にやっていて、セットプレーで取れるとこは取って、あとは運動量を絶対に落とさないことを大切にやってきました」
R「今回の愛知県選抜は名古屋オーシャンズU-18中心だったかと思いますが、他チームからは何人くらい選抜に参加していたんですか?」
北野選手「2人ですね」
R「その2人が加わって何か変化したところもありましたか?それとも、オーシャンズのやり方を意識してやっていましたか?」
北野選手「そうですね、練習だけでなく私生活から2人と食事したりしてオーシャンズのスタイルに慣れてもらうようにして、上手い事できたかなと思います」
R「高校生年代最後のフットサル大会でしたがどうでしたか?」
北野選手「高校生のフットサル大会だとサッカーチームも出て来るのでやりづらい部分はありましたが、最後に結果を残せて良かったです」
R「今後、選手としてはどういう道に進む予定ですか?」
北野選手「僕はオーシャンズのサテライトに決まっているんですが、これからもっと上を目指して頑張りたいです!」
<愛知県選抜U-18・10番 水野拓海選手>
R「優勝おめでとうございます。今の気持ちは?」
水野選手「嬉しいの一言です」
R「今までタイトルは取ってきましたか?」
水野選手「中学校の時は取らせていただきましたが、それは先輩たちのお蔭というのが大きくて、自分が最高学年で取れたのは今回が初めてです」
R「高校生最後の大会で結果が残せたわけですね。水野選手は正にその中心になって活躍していましたが、自分の強みはどこだと思っていますか?」
水野選手「身体の強さなので、それを全面に出してキープして、みんなの上りを待ったり反転してシュートしたり、点を取ることを重視しています」
R「今まではサッカーとフットサルの両方をしてきたんですか?」
水野選手「サッカーは小学生の時だけで、中1からはフットサルだけです。U-15から名古屋オーシャンズに入らせてもらって」
R「今回、サッカー強豪の鹿島学園との対戦がありましたが、サッカーチームと試合をすることはどう感じていますか?」
水野選手「負けられないのは当たり前だと思っています。負けたらフットサルをやっている人たちに失礼だと思うので、勝つことが重要だと思います」
R「どういうところにサッカーとフットサルの違を感じますか?」
水野選手「パス回しとか連動が違うと思います」
R「今後の目標を教えてください」
水野選手「名古屋オーシャンズのサテライトに行ってトップに上がれるように頑張ります!」
<東京都ユースリーグ選抜U-18・18番 清水竣生選手>
R「決勝戦は2-4という結果になりましたが、感想をお願いします」
清水選手「個の差が出ましたね。自分たちもある程度の個はあったと思うんですが、相手の個の方がずば抜けていて、自分たちはそれに圧倒されて負けた感じですね。1対1で抜かれて失点したシーンもありましたし、そういう所で負けなかったらもっと点差は縮まっていたし、もしかしたら勝っていたかもしれない」
R「東京開催という点は意識しましたか?」
清水選手「やっぱり地元なので、みんなとしても気持ちは高まっていましたね。俺らのホームだし、やってやろうという気持ちはありました」
R「森監督についてはどういう気持ちですか?」
清水選手「個性がバラバラの僕たちを上手くまとめてくれて、一致団結させてくれたのは森監督なので感謝しています」
R「ご自身のパフォーマンスについてはどう思っていますか?」
清水選手「僕はこれから先Fリーグでやりたいと思っているので、今大会でも、もっと違いを見せたり勝負を決められる存在になりたかったです。僕はまだまだ努力をしていかないと上では通用しないし、同年代でもレベルが高い選手がたくさんいるので頑張らなければと改めて思いました」
R「今後の目標を教えてください」
清水選手「これからもっともっと努力して、Fの舞台で戦えるように頑張りたいです!」
文・写真:futsal R編集部
<編集後記>
今大会では、愛知県選抜U-18の選手たちの「『フットサル』をやっているからこそサッカーが巧いチームに負けたくない」という思いが見事に実った。あのFリーグ・名古屋オーシャンズの下部組織といっても、セレクションなしでフットサルを続けてきている選手がほとんど。もとからサッカーエリートだったわけではなく、高橋監督も「足元の技術では鹿島学園といったサッカーチームには遠く及ばない」と語っていた。フットボールのボールタッチの技術が高いからと言って必ずしもフットサルで通用するわけではなく、フットサル特有の戦術に加えて、「認知」「判断」「実行」の質とスピードが勝敗を決める、そのようなことを思わせる大会だった。
今大会で活躍した選手たちが、今後どのようなフットサルの舞台で花を開かせるのか。このような全国規模の大会があることに感謝し、育成年代からのフットサルの更なる発展を多いに期待している。