2016年1月5日、小平市民総合体育館で開催された『FC東京フットサル交流戦』を視察した、U-19フットサル日本代表監督の小森隆弘氏とJFAフットサルテクニカルダイレクターの小西鉄平氏に、日本における「フットサルの普及」「フットボールの未来」、「U-19フットサル日本代表」等についてお話を伺った。
―まず初めに、本日、U-12年代のフットサル交流戦の視察をされた理由を教えていただけますでしょうか。
小西 FリーグとJリーグのチームが交流する機会はまだまだ珍しいことなので、どういった交流をしているのかなというのを観に来ました。
小森 サッカー協会だとか連盟ではなく、Jリーグのクラブがイニシアチブを取って有名チームを集めて交流戦が開催されるというのはすごくインパクトがあるし期待感があって、この後また続いて行けば、これまで長年期待していた「フットサルのベースカテゴリーへの普及」のきっかけになるんじゃないかな、その記念すべき1回目なのかなということで観に来ました。
―観戦されての感想をお伺いますでしょうか。
小西 「フットサルをやっているな」という匂いをすごく感じることができました。自分たちがセットしてプレーすることを意識してやっていることとかゴール前のセカンドポストを使ったプレーとか、サッカーだけやっているんだとそういう発想はないだろうなという所は随所に見られたので、フットサルが少しずつ普及してきていて、いい方向に働いているんじゃないかなという印象は受けます。
小森 ゲームを観ていると、どのチームもフットサルに目を向けてトレーニングされているんだなというのを感じます。フットサルとしてやろうとしている雰囲気が全体としてあるのは嬉しく感じましたね。細かい所はこの年代で問う所ではないと思いますが、フットサルとして、フットサルの特性で、フットサルの状況で相手に打ち勝つために、選手も指導者も思考して取り組んでいるんだなというのが見えたので嬉しかったですね。
―取材等を通して、この年代にかなりフットサルが普及してきていることを感じますが、更に普及させていくためにはどういう取り組みが必要だと思われますか?
小森 これまで何年もいろんな方がいろんな地域でいろんな角度から普及活動をしてきている中でこの現状があるわけなので、一網打尽に状況が打開できるものは無いのかなとは思っています。ですが、その中でも、こういうJクラブのチームがフットボールとしてフットサルを捉えて、一つの機会提供にもなる、尚且つサッカーにも活きていく可能性もあるというチャンスを感じ取って取り組んでいるというのが一つの概念として広まって、これがフックになって、地域にある有力なサッカークラブがその風潮に乗っていってくれれば普及加速のチャンスになるのではないかという期待感はあります。
―育成年代にフットサルがより普及していった場合、フットボール界にどういう影響を与えると思われますか?
小西 サッカーとフットサルは別の競技なので最終的には別々の道を進むということには変わりはないと思いますが、Jクラブ、Fクラブ共に下部組織が出来ていって交流することで、フットボールとしての枠が広がって、そこを目指す、やっている方たちが増えて、それを教える指導者もどんどん増えてくるということがこれからの未来になると思うんですね。人数が増えていけば自ずと競技性、普及性も強く出て来るので、まずはしっかりと人数を増やしていく意味ではこういう交流はいいきっかけだと思いますし、これから未来が生まれるんだろうなということは感じますね。そのためにも、指導者、大人の人たちがちゃんと正しくフットサル、サッカーをより理解していくことが必要だと思います。フットサルの人たちがサッカーをやっている人たちに対して「フットサルの何が良くて、何がサッカーに活きて、こういう所を一緒にやるとフットボーラーとしての質が上がるんです」ということをより明確に伝えられるようになることが今後最も大事なことになるのではないかと思います。タッチ数が多いからとか決断の回数が多いからというものじゃなくて、もっと具体的に。スペースがどうだとか体の向きがどうだとか、そういうものがサッカーの試合の中で実際にどう影響しているかというのを紐解いていくということが今後もっともっと必要になると思います。そうでないと、サッカーの指導者の人たちが本当の理解をしてくれないですし、ミニサッカーでいいじゃないかと思われてしまうと思います。
―フットボールという大きな枠のお話をいただきましたが、フットサル単独としてのビジョンもお聞かせいただけますか。
小西 もちろんフットサルがフットボールという大きな枠から出ることは絶対にないので、僕個人の意見としては、フットサルがサッカーを超すことはできないと思うんですね。人数もそうですし、人気もそうですし、いろんな面において。でも、フットサルが持っている「狭い局面でする競技」「よりロジカルにプレーする競技」といった特性や「観客と距離が近くてお客さんが熱を感じやすい環境」といった室内競技の良さがもっともっと理解されていけば、フットサルとしてのラインがもっと明確に出来て、U-12からフットサルをやる、U-15で続けていく、U-18でより精査していく、更にその上でFリーグのトップチームにしっかりといい選手が輩出される、そして、代表チームとしても男女それぞれにワールドカップでちゃんと結果が出る。これが継続していくということがフットサルの今後の大きなビジョンじゃないかと思います。
―ここからは、U-19フットサル日本代表の小森監督にお話伺います。昨年12月に行われた2回目のU-18フットサル日本代表候補トレーニングキャンプは、1回目のキャンプから練習内容を変えたと伺いましたが。
小森 基本的にやった内容を大きく変えたということではなかったんですが、来年の本大会に向けた予選が今年あるということを目していった時に、許されている時間、状況というものが当初予定していたものとは少し違ってきたので、それに応じた軌道修正をしました。初めての選手も呼んでいるということではあったものの、ある程度踏み込んだ所まで進める必要があるということで調整をしました。特徴的な所では、セットプレーに何度も取り組み、フィジカルトレーニングをやらずにその分フットサルのゲームの流れを理解してもらえるアクションとセットプレーという所に注力しました。
―人選のポイントについて教えてください。
小森 今回に関しては、フットサルに精通しているタレントを軸に、尚且つそれにもっとスケール感を与えてくれるサッカーからのタレントをミックスできるように選びました。三分の一がサッカーチーム所属の選手。そして、三分の二がフットサル専門で取り組んでいる選手、更にその中の半分は前回も招集した選手でした。
―今年の夏もU-18の全日本ユースが開催されますが、そこからまた新たに候補を選ぶ可能性はありますか?
小森 物理的にはタレントがいればいつも門戸は開いているというのは前提にあります。今年はU-18の全日本ユースだけではなく、大学選手権も観に行きたいと思っています。今年はU-19として活動することになるので、(2016年4月からの)大学1年生と大学2年生の早生まれまで入ってきますので、その辺りはしっかり見たいと思っています。しかし、これまで僅か3日間×2回ではありますが、トレーニングキャンプを行ってきている中で、ある程度ベースを持ったメンバーがいることが分かっていますので、その人たちを軸にするということは変わらないと思っています。そこに割って入るには、それ相応のフットサルのベースをしっかり持ってチームの枠組みを作っていけるタレントか、サッカー専門でやってきているけれどもよっぽど早くフットサルのゲーム感を吸収しつつスケール大きく、また違う側面をチームに与えてくれるタレントでなければ、そのリストに入っていくのは難しいだろうなと思っています。今いるメンバーは優秀だと思いますので。
―今年のトレーニングキャンプは12月に行われる予選の直前に行われる1回のみとのことですので、そのキャンプに選ばれた選手=予選に出場する選手ということになりますね。
小森 そうですね。ただ、予選に出たところで、それでチームが完成で本大会もそのメンバーでということでもないですし、ましてや予選大会に選ばれた選手にとっても選ばれなかった選手にとってもそこがゴールではなく、ずっと続いていくものだと思っています。
U-19(AFC U-20フットサル選手権2017)フットサル日本代表は、今年 、11月26日~30日にトレーニングキャンプを行い、12月1日~11日に開催される『AFC U-20フットサル選手権2017予選』に出場する。